緊張しない方法
日本語教師に限らず、皆さんは緊張するときってありませんか。きっとこの記事を読んでくださっている方は、そういう経験をお持ちだと思います。
よく、「集団授業なんてすごい、緊張してムリだもん」とか「どうやったら人前で話すときに緊張しないかな」とか「面接時にいつも緊張してしまって上手く話せないんだけど、どうしたらいい?」という質問を受けます。
なので今回は、私がどのようにそれを解決しているのかをまとめてみました。
そもそも、緊張するときって、どんなときでしょうか。
みんなの前で発表したり、入試などの試験だったり、出世がかかっているプレゼンだったりと、様々あると思います。本番直前には心臓が張り裂けそうになって、会場に入ったら頭が真っ白になったり。ありますよね。
私はサラリーマン時代、とても小さい会社でしたので、なんでもやらなければなりませんでした。大抵の仕事はいいのですが、その中で最も嫌だったのは「飛び込み営業」でした。
知らないお店に入って商品を扱ってくれないか話すわけです。今でもその初日のことを覚えています。ドキドキして手汗が異常に出て、店に入れず周りをうろうろ、まさに不審者です。恥ずかしい話ですが、本当に緊張しました。
そんな状態でも、1ヶ月後には地元の有力な商店契約を結んだり、新規開拓も普通にこなせるようになりました。
そんなこんなで私は今は日本語教師です。学生時代から教壇に立っていたので、自分にとっては慣れたことなのですが、それでも、緊張する場面があります。
それは「初めてのクラス」です。そこで、営業での経験と私が普段「緊張したときにしていること」
をご紹介いたします。
緊張する場面に臨む前に
前述した通り、私は日本語教師ですが、初回のクラスでは毎回緊張します。また、飛び込み営業で大変緊張しました。そんな緊張する場面の時、あることをします。 それは、
準備
です。
「いやいや、そんなん当たり前やんけ。」
と思われるかもしれません。
日本語学校において言えば、普段の授業でもちゃんと準備をします。でも初回だけはちょっと色が異なります。
いつもの授業はもう勝手知った学生たちですから、クラスごとの特徴がわかります。
すると、「このクラスはこうやって、こういう時にはこういう話をしよう。」と、ある程度予測の元に準備をすることができます。しかし、初めてのクラスではその予測ができません。
飛び込み営業もそうです。全く知らないお店に行って、全く知らない人に商品を提案しなければなりません。開拓後は、もう顔見知りですから、どうやったらオーナーや店長のことを思い浮かべながら、性格などを考慮したうえで提案を考えることができます。
また、入学試験や入社試験、アルバイトの面接など、未知の誰かに評価される時も大変緊張しますよね。
そんな緊張する所に身を置く際、私が必ずすることは
「引き出しを多く用意しておく」
ことです。「引き出し」というのは、言い換えるなら様々な「不安」に対する「対策」です。
不安になるのはいいこと!!
私は、不安になるのはいいことだと思っています。不安になるというのは、それだけ「リスクが目についている」からです。「ああなったらどうしよう」「こうなったら嫌だな」といった不安は、
「ああなるかも知れない」とか「こうなる恐れがある」ということを示しています。
そういった不安が緊張へと繋がるのです。だったら、その「対策」を考えればいいのです。
「場がしらけちゃったらどうしよう」 → 「場がしらけたらこういう話をしよう」
「話を聞いてくれなかったらどうしよう」 → 「注目させるためにこういう指示の仕方をしてみよう」
営業
「怒鳴られたらどうしよう」 → 「お店の情報を調べて、どんなところにこだわりがあるか、それを損ねないように話そう」「押売りと感じさせないように、こんな話し方をしよう」
「断られたらどうしよう」 → 「的確な提案をするために、お店の課題やニーズを聞き出せる尋ね方を考えよう」「何パターンかアプローチを用意しよう」
このように、「不安」な気持ちから、「対策」を練ります。
それを書き出したり、実際に家で練習します。実際に練習するのはとても有効です。出来るならば声に出します。すると、「良いと思ったけどこれじゃあダメだな」とか「もっとこういう言い方の方がいいな」とかが分かります。
私は更に、家の人に聞いてもらったりして、アドバイスをもらうこともあります。とにかく、練習です。その緊張するシーンと、なるべく同じ状態で行うのがベストです。なので私は練習をする際は立って、会場やお店を想像しながら、ジェスチャーなんかもつけたり、本番さながらにやります。入試でいうところの、模試にあたるのでしょうか。似た環境、似た緊張感の中で練習するということです。
この「引き出し」(対策の数)が多ければ多いほど、色々な状況に対処ができるのです。
もうこの準備さえしっかりできていれば、99%は完了です。
本番前にやること
「さあ、対策も考えた、準備もした、練習だって体に染み付くほどした!ああ、でもあと数時間後には…緊張してきた…」ってなります。その準備が入念なほど、緊張してしまうものです。
でも、よくやったんです。ちゃんと考えて準備したんです。だからこそ、信じてあげてください。
残りの1%、本番前は
「自分を信じて何も考えない」
無です。無。それだけやったんですから、あとは野となれ山となれです。
考えてみてください。グルグル考えてこれから起こることが良くなりますか?考えることで落ち着いて本番に臨めますか?備えが万端なら、後は実行するだけなんです。そこに余計なグルグルは必要ありません。
「そう言ったって、考えちゃうよ!」
「どんなことをしても緊張しちゃうよ!」
ごもっとも。
「緊張を殺そうとすればするほど、余計に緊張してしまう」ものです。
じゃあ、どうやって無になるのか。大切なのは、緊張を抑えようとしないことです。その緊張も受け入れて、全身を無にします。私が実践している方法は次の通りです。
1.目を閉じる
2.周りの音を聞く
3.肌の感覚を感じる
細かくみていきましょう。
1. 目を閉じる
まずは目を閉じます。周りには色々なものがあります。それらが視覚情報として入ってきてきてしまうと、集中するにできません。まずは視覚情報を断ちます。
2.周りの音を聞く
皆さんの今いるところにはどんな音がありますか。車の音や話し声、電車の中だったらダンダンという線路を走る音。結構色々な音が聞こえます。それらに集中してください。
この時、大切なのは「連想しない」ことです。
例えば、「車の音がする」→ 「どんな車かな」 → 「こんな車かっこいいよな」 → 「車欲しいな」→ 「車買ったら…」
のように、私たちの脳は勝手に連想を始めてしまいます。でも、これでは脳は結局グルグルの状態です。グルグルの状態だと、不安なことも浮かび上がりやすくなります。
ですから、「車の音だ」で終わりにしてください。コツは、「車」「自転車」「飛行機」「風」
というように、単語で思い浮かべては次の単語にいくようにするといいでしょう。
3.肌の感覚に集中する
さすがに音ばかり拾っていると続きません。そのうち連想してしまい、不安になります。もう飽きたなという時、気が散りそうになったら、次は肌です。触覚といってもいいですね。今あなたの肌に触れているものに集中します。
どんな物に触れていますか。服やつり革、風が当たっているかもしれませんね。
感覚を研ぎ澄まして、どんな感覚があるかを感じます。
今度は、単語のような言葉ではなく、ただ感じるだけです(慣れないうちは「風」とか「服」のように単語を思い浮かべてもいいかもしれません)。
この時、結構な緊張状態にあると、自分の心臓の鼓動も感じます。ですが、決して抑えようとと考えてはいけません。心臓のドキドキを感じるだけです。緊張しているのですから、鼓動を感じるのは普通です。抑える必要はありません。ただ、心臓を感じるだけです。
これが無の状態です。あなたの脳は「感覚」に集中して「思考」しない状態です。この状態だと、緊張していても本番に臨みやすくなります。
どうしても連想してしまうとき
そうは言っても色々考えてしまうのが私たちの脳です。どうしても緊張が強く、集中できない時は次のようにしてみてください。
1.目は閉じたままにする
2.思い浮かんでいる言葉を塊としてイメージする(ボールのような)
3.言葉の塊を小さな気球に乗せるようなイメージをする
4.その気球を空に飛ばしてやる
5.言葉が思い浮かぶ度に空に飛ばしてやる
これは連想をストップするやり方で、以前NHKの「ためしてガッテン」という番組で取り上げられていた方法です(番組では葉っぱに乗せて川に流すイメージを紹介していました)。慣れてくるとイメージをしなくても「感覚」に集中することができます。よく緊張してしまう人や、不安になってしまう人は、日頃この練習をしてみるといいでしょう。
私はよくこの「集中」を、会場や学校に向かう電車の中でしています。
そして電車を降りた後も、目を閉じていた時と同じように、感覚だけに集中して歩きます。
会場でも同じです。発表や授業の準備を淡々とします。その間、心臓が更にドキドキなってもそれは当然のこととして、ドキドキさせておきます。
最後の最後は気合です。(笑)
「えいやっ!!」
と登壇します。あとは野となれ山となれの精神です。
失敗しても気にしない
どんなに準備をしていても、コケることはあります。「え、何この状況」ということは普通にあります。俗に言う失敗です。それはもう超落ち込みますよね、あれだけ準備したのに、みたいな。
落ち込むことは自然なことです。準備期間が長ければ長いほど落ち込みます。
私はメンタルがガラスなので、結構凹みます。そして一通り落ち込んだら、「引き出しが一つ増えた」と考えるようにしています。
実際、予測できなかった状況が起きた訳です。自分の中に引き出しがなかっただけです。次回はその引き出しも用意すればいいのです。
別に失敗しても、死にません。生きています。いいのです。むしろ、
「あそこは成功したぞ!」と。
更に言えば
「緊張状態のなかよく飛び込んだ!それだけで俺凄いじゃん!」なのです。
頑張ったんですから、自分を褒めてあげましょう。「私はできた」と。
それが重なったら、どんどん経験値が溜ります。そのうち、「緊張しないの?」とか言われたりします。いや、実際緊張しているんですけどね、人の目にはそう映ったりするのでしょう。
緊張は期待の裏返しでもあります。その期待が大きければ大きいほど緊張してしまいます。そして、失敗したら全てが終わるような考えにも至ります。しかし、本当に全てが終わるようなことは世の中ほとんどありません。どんなにうまくいったと思っても、ダメな時はありますし、逆にうまくいかなくても成功することだってあります。まして授業や面接など、人相手なら尚更です。人の感じ方なんて分かりません。運もあるとさえ思っています。そんなもんです。
それよりも、自分はそこに向かって一歩踏み出せたんだということの方が重要です。どんな小さいことでも褒めちぎる。私凄い!と肯定しまくる。その上で振り返って更に良いものにしていく。そうしていると、気づいた頃には周りから凄いねと言われるようになるんです。
これは出典不明の聞いた話なので、信憑性はわかりませんが、「ウォルトディズニーがディズニーランドを立ち上げる際、その融資を300回以上断られた」そうです。
その時は「諦めないことが大事」という話の中で聞いたのですが、それより私は、それだけ話したらきっと話し方も最初とはかなり違っていたんじゃないかと思います。(ウォルトが緊張していたかは分かりませんが)始めは真っ白でも、繰り返すうちに質が上がり、たとえ緊張していても上手く話せたりします。そりゃ300回も話したら質も上がりますよね。もちろん、彼の熱意があってこそ続いたのであろうし、また、成し遂げられたのであろうことは言うまでもありませんが。
上手くいかなくても続けていくことで、量が質になっていくと思っています。
緊張するというのは、未知に対峙している証拠です。それだけで素晴らしいと思います。凄いことです。この記事がそんな凄い皆さんの一助となりましたら幸いです。